折々のうた

家中が昼寝してをり猫までも 五十嵐播水 石蕗の花(1954年)

日本人はもっと怒れと 若者に説きて むなしく 老いに至りぬ 岡野弘彦 『バグダッド燃ゆ』 砂子屋書房、2006年

月天心貧しき町を通りけり 与謝蕪村

霧しぐれ富士を見ぬ日ぞ面白き 松尾芭蕉「野ざらし紀行」

ふところに入日のひゆる花野かな 金尾梅の門「古志の歌」

室生犀星 ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの よしや うらぶれて異土の乞食となるとても 帰るところにあるまじや ひとり都のゆふぐれに ふるさとおもおもひ涙ぐむ そのこころもて 遠きみやこにかへらばや 遠きみやこにかへらばや

村山槐多 二月 君は行く暗く明るき大空のだんだらの 薄明りこもれる二月 曲玉の一つらのかざられし 美しき空に雪 ふりしきる頃なれど 昼故に消えてわかたず かし原の泣沢女さへ その銀の涙を恨み 百姓は酒どのの 幽かなる明かりを慕ふ たそがれ日のただ中か 君はゆく大空の物凄きだんだらの 薄明り そを見つつ共に行くわれのたのしさ。

 足もとはもうまつくらや秋の暮 草間時彦「桜山」

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